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村人A(紙)に関する進捗報告と各種返信及びあれやこれ。
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物凄く個人的なイメージになるのですが、童話を自分流にリメイクというのは、少女小説書きの憧れだと思うのですが如何でしょうか。いや、自分が少女小説を書いているか、という根本的な問題は気にしない方向で。
で、先日ついったーでゴロゴロしている時に、その童話リメイクの機会がありまして!乗るしかないこのビッグウェーブに!と鼻息荒く飛びついてみたものの…。うん、まぁ、ご覧の有様だよ!という落ちになりましてね?
よくよく考えてみれば、自分が「乗るしかないこのビッグウェーブに!」と思ったネタはだいたい思ったものと違う着地になることがままありましてね?そもそも何書いてもそんな感じになりましてね?
まぁ、オチの出来はともかく、せっかく書いたのでブログで晒してみようと思います!
憧れの童話リメイク、ハードル高かったよ…。



元ネタは、イソップ童話の『ガチョウと黄金の卵』です。


 ある農夫は、一匹のガチョウを飼っていた。毎日毎日美味しい卵を産んでくれる、有り難いガチョウである。今日も今日とて、農夫は朝食の材料にしようとガチョウの卵をとりに行った。そして、そこで衝撃の事態に遭遇するのである。
 納戸の片隅に置かれた藁の上に座るガチョウの下から、慣れた様子で卵を取り出したそうとした農夫は、触った卵の手触りに違和感を覚えた。なんだかつるつるしているし、心なしか冷たい。その上なんだか重いのである。不思議に思いながらも卵を取り出すと、農夫の手にしていたものは溢れんばかりの輝きをたたえた、金色の卵であったのだ。
「……は?」
 金色に輝く卵を見て、農夫は呆然とした。それはそうである。卵が金色なのだ。しばし手中の卵を呆然と見ていた農夫だったが、どうにか己の目に映る金色の卵を理解したのか、卵を放り出して慌ててガチョウを抱き上げた。
「と、敏夫ー!!?」
 敏夫は、農夫がこのガチョウにつけた名前である。何で敏夫なのかとか、雌なのに雄の名前なのかとか、そもそもこの農夫とやらは何人なんだとかメタな疑問はままあるが、とにかく農夫は慌ててガチョウもとい敏夫を抱き上げて、その体をあちこち確認した。それはそうである。飼っているガチョウが金色の卵なんぞ産んだら、ガチョウの体の異常を疑うのが当たり前である。
「……変なところは無いなぁ、敏夫。お前大丈夫なのか?」
 しばしガチョウもとい敏夫のあちこちを調べていた農夫は、自分で分かる範囲では敏夫が健康体であることを確認して、敏夫を藁の上に戻した。敏夫はいつもの様にガーガーと鳴いていて、変わったところは無い。
「とりあえず大丈夫そうだなぁ。飯食うか?」
 ガーガーと鳴く敏夫に餌を与えた農夫は、やっと自分が放り出した卵のことを思い出した。硬い土間に打ち付けられてしまえば割れてしまったのかもしれないが、金色の卵は運良く敏夫の脇に積んであった藁の上に落ちたらしい。とりあえずその金色の卵を拾って、男は納戸を後にした。

 農夫は己一人で暮らす小屋に戻ると、とりあえず朝食の準備を始めた。いつものように、フライパンでガチョウの卵の目玉焼きを作ることにする。鉄のフライパンを熱し、卵を割り入れようと、フライパンの縁に金色の卵をぶつけたが、カチン、という金属同士がぶつかる音がしただけで、卵は割れるどころか傷も付かなかった。
「……金色だから硬いのか?」
 農夫は眉間にしわを寄せ、今度はもう少し強めに卵をフライパンの縁にぶつける。ガン、という重い音が響き渡ったが、またしても卵は割れなかった。農夫は無言のまま、再び卵をフライパンの縁にぶつけた、というか、叩きつけた。ガンガンガン。金属加工の工場か、と言いたくなるような音が響き渡るが、卵は割れない。農夫もムキになっているのか、ひたすらフライパンの縁に卵を叩きつけている。
「これ、卵じゃねぇのかなぁ」
 しばらく鉄のフライパンに叩きつけられていた卵は、卵型ではなくひょうたん型に変形していた。そしてそこまでやってみて、農夫はこの金色の卵が、殻が金色の普通の卵ではなく、卵型をした金塊だということに気づいたらしい。
「何食おう……」
 がっくりと肩を落として、農夫は金色の卵を置いた。彼は今空腹で、そんなところに金塊が手に入ったって困るのである。昨晩食べたの豆の煮込みが少し余っていることを思い出した農夫は、焼いた黒パンに自家製のチーズ、そして豆の煮込みを食べながら、目の前の金色の卵を見つめた。
「これ、どうすっかなぁ。売るしか無いだろうけど、町まで行かなきゃなんねぇよなぁ……」
 破格の値段で取引されるであろう量の金塊だということは分かったが、悲しいかな、農夫の家は山奥の寒村の外れの外れにある小さな集落の更に外れにあった。金の取引が出来る店はおろか、そもそも店がないのである。月に一度、山を降りて麓の町に買い出しに出るが、その町にも金の取引ができる店などあったかどうか。麓の町から更に降りた川沿いの街ならば扱いがあるだろうが、その街まで足を伸ばすことなど、一年に一度あるかないかである。とりあえず男は、ひょうたん型に変形した金色の卵を戸棚の片隅に仕舞い、農作業へと繰り出していったのだった。


 農夫のガチョウもとい敏夫が初めて金色の卵を産んでからしばし。敏夫は順調に金の卵を生み続けていた。
「敏夫ォ……お前、今日もなのかよ」
 農夫は土間に膝をついて、がっくりと項垂れた。彼の手元にはそれなりの量の卵型の金塊が溜まっていたが、食べられるガチョウの卵は一つも無い。今日も敏夫が産んだのは卵型の金塊で、農夫はしばらく卵料理を口にしていないのだ。
「頼むよ敏夫、普通の卵産んでくれよ……」
 しくしくしく、と土間に泣き崩れた農夫だったが、当の敏夫はガーガーと鳴いて餌をせびるだけである。敏夫が産む卵は、農夫にとって貴重な栄養源だった。何しろここは山奥の寒村の外れの外れで、農作物の収穫量はそう多くなく、生産している農作物の種類も限りがある。おまけにこの農夫の飼っている家畜は、他に年老いた山羊一匹なのである。
「川沿いの街なんて、早々行けねぇんだよ……頼むよ……」
 農夫の必死の懇願などどこ吹く風、敏夫はガーガーと鳴き続けている。しばらくの間その場で泣き崩れていた農夫だったが、顔を伏せたままゆらりと起き上がると、ふらふらと納戸から出て行った。
 そして、いくつか時間が過ぎて納戸に戻ってきた農夫の手には、重量のある肉切り包丁と紐のついたしっかりとした木材、そして湯をたっぷりと張った桶があった。
「……新しいガチョウなら、隣の奥さんに頼めば一羽ぐらいは譲ってもらえる。だけど、うちには二羽飼うほどの餌は用意してやれねぇんだ。敏夫ォ、俺にはもうこれしか無いんだよ……」
 陰鬱な表情で敏夫を見つめる農夫の目には、悲壮な決意が浮かんでいた。


 その日の夕食は、寒村の農夫の夕食としては豪華すぎるものだった。今日は祭りの日でもないし、祝いの席でもない、何の変哲もない一日であるが、見事なガチョウの煮込みが食卓に登っているのだ。そして、それを食べている農夫はぼろぼろと大粒の涙を流しながら、煮込みを必死に口に運んでいる。
「すまねぇ敏夫……すまねぇ……」
 後日、その農夫の元へやってきた新しいガチョウは、毎日美味しい卵を産んでくれているそうな。しかし、その農夫はしばしば、卵を取るためにガチョウの体の下へ手を突っ込むのが怖くなるらしい。

<終わり>
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