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いつもはスルーしがちな季節のイベントに食いつき、季節感のあるサイトですから!みたいな顔がしたかったものの、案の定全力で遅刻した加藤です。
……というわけで暦の上では霜月ですが、心意気はハロウィンのまま、ハロウィン小ネタを書いてみました。
いつものように『こもりがみ』メンツで書こうとしたのですが、最近寒くなってきて皆さん変態が恋しいのか、『お嬢様~』の感想を幾つか頂いたので、『お嬢様~』メンツで書いて見ました。
折りたたみますので、気になる方はどうぞー。

暦の上ではもう霜月だけどな!(大事なことなので2回言いました)


「ハッピーハロウィン!春佳お嬢様」
 学校から帰宅してみると、そう言いながら八千草さんがよく分からない場所から飛び出してきた。いつもの正統派執事姿にシルバーフレームの眼鏡、という出で立ちだったが、上着の胸ポケットから覗くハンカチはオレンジと黒で、小脇にはかぼちゃを抱えている。菅原の屋敷にやってきてからしばし経つので、私もこの人の神出鬼没っぷりやら唐突な行動にもだんだんと慣れ、何事も無かったように挨拶を返すスキル程度は取得した。
「あ、はい。ハッピーハロウィン」
「はい、ハッピーハロウィンです。まぁ、あまり日本では馴染みのないお祭りですが、とりあえずイベントごとには反応しておくのも日本人ですので」
「はぁ……」
 私は思わず微妙な反応をしてしまったわけだが、それを気にするわけでもなく、八千草さんは、ほら、ご覧くださいと小脇に抱えていたかぼちゃを天に掲げた。そのかぼちゃはなかなか立派な大きさのかぼちゃだったが、残念ながら緑色のかぼちゃで、オマケに実のくりぬき作業が適当なためか、目と口から若干かぼちゃの実と繊維がこぼれている。若干ホラーの香り漂うかぼちゃは、まぁ、ハロウィンらしいといえばハロウィンらしい。
 しげしげとかぼちゃを眺めている私に、八千草さんは楽しそうに声をかけた。
「さぁ、お嬢様。例の文句の出番ですよ。ご用意はよろしいでしょうか」
 そう言われて私は首をかしげそうになったが、今日このタイミングで出てくる『例の文句』はあれしかないだろう。しかし残念ながら、私はハロウィンの用意などしていない。
「あー、今お菓子持ってなくて」
 通学カバンには飴のひとつやふたつ入っているのだが、カバンは自室に置いてきたため、生憎今はお菓子の手持ちは無い。両の掌を見せて何も無いアピールをしてみせたが、八千草さんはやんわりと首を横に振った。
「いえ、大丈夫ですよ」
 八千草さんのその言葉に、私がトリック・オア・トリートの掛け声を掛ける方かと納得し、口を開こうとした寸前、八千草さんはにっこりと上品紳士にしか見えない笑顔でこう言った。
「さぁ、春佳お嬢様。お菓子はいらないのでいたずらをさせてください」
「……は?」
 いい笑顔でそう言った八千草さんは、微妙な表情を浮かべたままの私の手を取り、どこに持っていたのかオレンジと黒のラッピングが可愛らしい小袋をそっと握らせる。重さと感覚的に、クッキーか何かだろう。私が小袋に気を取られているうちに、八千草さんの笑みはどんどん深くなっていた。
「むしろこのお菓子を差し上げるのでいたずらをさせてください」
「や、あの……?」
 なんだかとんでもねーこと言い出したよこの人。どう反応したものかと戸惑っていると、相変わらずこちらのことなど気にも留めない様子で、相変わらず言動が意味不明な八千草さんは滔々と語りだした。シルバーフレームの眼鏡のレンズが、一瞬ギラリと光ったのは夕日のせいか気のせいか。
「いやぁ、素晴らしい響きだと思いませんかお嬢様。『いたずら』ですよ?どことなく漂う淫靡な感じがまた素晴らしいッ!そして女子高生にいらずら、という文章になればディ・モールト・ベネッ!美味しいものに美味しいものを足したら、そりゃあ美味しいに決まっているじゃあありませんか!」
 にこにこと楽しそうな八千草さんに圧倒され、ぽかんと口を開けたまま固まっていると、後ろからばたばたと慌しい足音が聞こえてきた。
「こんなところに……!」
 聞き覚えのある憎々しげな声に振り向けば、予想通り鬼の形相の仁井さんがこちらに走ってくるところだった。こちらもいつもの執事姿であったが、小脇にバスケットを抱え、親の敵に会ったようなものすごい勢いで走っている。
「チッ、イケメンな上に足が速いとか仁井くんってほんっとチート!これだからイケメンは!」
「何がですか!」
 思いっきり舌打ちをしてみせた八千草さんの言葉が聞こえたのか、仁井さんが声を荒げた。すると八千草さんはさっさと横に置いていた若干ホラーの香り漂うかぼちゃを抱え上げると、あっという間に走り去ってしまう。
 あまりの素早い撤退に、思わず八千草さんが走り去った方向を眺めていると、鬼の形相で走っていた仁井さんが私の前でぴたりと足を止めた。
「おかえりなさいませ……お嬢様」
 ぜいぜいと荒い息をつきながら頭を下げた仁井さんに、ただいま帰りましたと挨拶を返す。それににこりと笑顔を見せた仁井さんは、ごそごそと小脇に抱えたままだったバスケットを漁りだした。一体何かとバスケットを覗こうとした私の目の前に出されたのは、往年のバラエティ番組でよく見かけた、クリームたっぷりのクリームパイ。
「よろしいですか、お嬢様。お帰りになられたばかりでお疲れのところ申し訳ございませんが、こちらをお持ちください」
「今日のおやつかなんかですか?」
 こんなところでクリームパイを手渡されるのも困るのだが、食べてもいいものかとそう聞けば、至極真面目な表情で仁井さんは首を振った。
「いえ、これを八千草の顔に全力でぶつけてください」
「…………」
 最早懐かしい香りのする往年のバラエティ番組のノリに思わず無言になってしまったが、仁井さんは真面目な表情を崩すことなく言葉を続けている。
「毎年、八千草はあのように『お菓子はいらないからいたずらをさせてくれ』と色んな人間に襲いかかりますので、とりあえずお菓子をあげたという既成事実を作るため、こうして八千草の顔にクリームパイを投げつけるのが、菅原の家の恒例行事となっております……」
 そこまで言って、自分の喋っている事実に打ちのめされたのか、仁井さんが暗い表情で長い長い溜息をついた。由緒正しい元華族のお屋敷で、ハロウィンにクリームパイ投げが恒例行事になっているなど、誰が信じるだろう。世界が違うとしか言い様がない。しかも、あまり羨ましくない意味で。
 若干泣き出しそうな雰囲気の仁井さんがかわいそうになってきてしまい、私は思わずクリームパイを受け取ってしまった。
「あの、とりあえずぶつければいいんでしょうか」
「はい、それでトリック・オア・トリートが成立、ということになっております」
 なっておりますて、完全にルールが出来上がっているあたりがなんともひどい話である。しかし、これ以上つっつくと本当に仁井さんが泣き出しそうだったので、私はクリームパイを持って、八千草さんが走り去った方角へ歩いていくことにした。背後で鼻水をすすったような音がしたのは、多分気のせいということにしておこう。

<終わり>
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